三井住友FG・SBIの提携

三井住友FGとSBIが提携するとの報道があった。いよいよネット証券が伝統的証券会社と融合していく。特にリテールビジネスの中心になるのは確実にネット証券の方だろう。

 

1つは顧客の嗜好が既に変わってきつつある。顧客は確実にネット、便利さ、迅速さをサービスに求めるようになってきている。株の取引も情報収集もネットで十分だ。日本は高齢者層の割合が高いとはいえ、60代でも十分ネットを扱えるような時代になってきている。顧客の世代交代も進めば、わざわざ支店の担当者に電話して注文するニーズは減る一方だろう。

 

ちなみに、フィンテック分野も基本的には伝統的金融期間の「不便さ」を解消するサービスが中心に広がっていくはずだ。株取引等の資産運用だけでなく、送金、ローン、保険等、時間がかかって仕方ないサービスが多すぎる。フィンテック企業として台頭してきている企業の多くはこの伝統的金融機関のサービスの一部を取り出して、それをシンプルなウェブサイトや携帯アプリで提供しているものが多い。この顧客の嗜好の大きな変化を読み間違えると、大手金融機関も危ないだろう。

 

というのもその顧客の嗜好の変化に対応するためには大手金融機関のリソースを大きく変化させる必要がある。1つは支店だ。物理的な建物という意味だけでなく、そこで働くスタッフのコストが大きすぎる。

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上図は大手証券会社の収益と営業利益を比較したものだが(野村は会計基準異なるたため省略)、収益自体は伝統的な大手証券はSBIと比較して高い。一方で、営業利益に関してはSBIの方が高いくらいだ。この高い利益率は人的コストによるところが大きい。SMBC日興の社員数は1万人程度に対して、SBIは500人程度だ。従業員1人のコストが1,000万だとすると、この1万人の従業員を雇うのに1,000億かかることになる。これが伝統的金融機関の利益を圧迫しているのだ。

 

この顧客に提供するサービス(より早く便利なサービス)とチャネル(支店チャネル→オンラインチャネル)の変化は一体となって行わなければならない。大きな負の遺産を抱えた大企業は大きな課題を抱えている。三井住友にとってはこの動きを大きく進めたいということだろう。