COVID-19による経営難とChapter 11について

COVD-19の影響でどこも経営が苦しい。中には既に破綻状態にある企業もある。

 

レンタカー大手のHertzもリース支払いが滞っている状態で、デフォルトぎりぎりの戦いが続いている。

 

この4月27日の報道によると、Hertzは車両をリース契約で仕入れてそれをレンタカーとして使用している。COVID-19の影響でレンタカー使用者が激減しているにも関わらず(通常80%程度の車両利用率のところ、COVID-19以降20%程度に落ち込んでいる)、そのリース契約の支払いが毎月発生している。Hertzは債権者と交渉を開始し、債務支払を猶予してもらいデフォルト回避を目指している。Hertzの負債は170億ドル(約1兆140億円) で、うち37億ドルが社債として、134億ドルが自動車を担保とした債権となっている。Hertz側も債権者側もリストラクチャリング・アドバイザーを雇って交渉に臨んでいる。1万人の従業員を解雇するなど、コスト削減を急ピッチで進めている。

 

5月5日の報道によると、交渉期限の最終段階で債権団から猶予を得ることが出来、ひとまず経営破綻は免れた。その内容によると5月22日までに財務戦略を立てることを条件としている。

 

さて、ここで問題となるのがこのChapter 11申請に関する経営者の判断だ。いわゆるChapter 11とは連邦破綻法の11章である"Reorganization"に基づく破綻処理のことである。経営に行き詰まった企業経営者がこのChapter 11を申請すれば、法律によって会社の資産は保護され、基本的に現職の経営者が引き続き事業経営を続ける。その上で再建計画が建てられるのだが、その際に負債・株式の再構成がなされる。(例えば債権保有者に減価された債権と株式が新たに分配され、もともとの株式価値は大きく損なわれる等のリストラクチャリング。)その過程で債権団との長期の交渉が行われる。

 

結局債権団と交渉するなら、経営者もさっさとChapter 11申請すればよいのではという気もするが、なぜChapter 11申請せずに債権のリストラをする(Workout)を目指すのであろうか。経営者にとってコスト面・時間面でメリットがある。法務関連のコンサルフィーは高くつくし、Chapter 11の手続きは長引く傾向にある。

 

債権者にとっても、Chapter 11の下での取り分は期待できないため、Workoutで経営陣と交渉しながらよりベターな条件を引き出していくインセンティブが大きい。(Chapter 11が申請されてしまえば、資産は保護され、債権者は担保の差し押さえも出来ない)。財務的に危機的な状態にある企業においても、Chapter 11は最後の手段なのだ。Hertzが今後どうなるかは分からないが、Chapter 11を目の前にして経営陣・債権団が交渉を続けている。

 

ちなみに、Gold's Gymは比較的速やかにChapter 11の申請に踏み切った。Workoutによる交渉の望みが薄い場合は速やかにChapter 11が合理的になる。